銀河鉄道999ラジオドラマ・第13話
放送日:98/01/23

第13話,「時間城の海賊(後編)」

(メーテル)鉄郎
(自称ハーロック)あの床の下はあらゆる時間の交錯する世界だ.生身の人間がほおり込まれたら,長くは持たん.剣を引けメーテル.さもないと鉄郎の命は無いぞ.
(メーテル)はあ〜う.(泣くメーテル)
(自称ハーロック)手遅れだよメーテル.この城は今,時間の中を飛んでいる.鉄郎は時間の流れの中へ落下した.どの時代へ落ちたかわかりはしない.探すことは不可能だ.

(ナレーション )
鉄郎は真っ白な無の世界を流されていく.
どこまでも,どこまでも.
だが,彼の身を案じるメーテルはその時いつにも増して美しい,
壮絶な美を横顔に讃えていたという.

(自称ハーロック)どうしたメーテル.何故,だまっている.何故,悲しまない!一体何を考えているんだ.
(メーテル)宇宙の歴史に魔女と書き残されてもいい.悪魔と書き残され未来の人々に罵られても構わない.私は鉄郎のためにあなたを殺す.死んでいったたくさんの若者たちののために,あなたのその機械の体を破壊する.
(自称ハーロック)おい,何をする.どうする気だ.待て,おい,待て.

ゴォ〜(雪嵐の音)
(鉄郎)うわあ,あ,あ,いててて.おまけに寒〜い.はあ,うわあ,雪だ.ここ,なんだか妙に見た景色だなあ.そうだ,この雪の冷たさ覚えている.
(鉄郎の母)鉄郎,雪が強くなるわ,小枝を集めなきゃ.
(鉄郎)はあっ!!
(過去の鉄郎)うん
(鉄郎)あれはお母さんと僕
(過去の鉄郎)あった,あった.お母さん,こんなにとれたよ.
(鉄郎)あの先はわが家,地球での僕の家だ.
(鉄郎の母)良かったわね.さあ,中に入りましょ.
(鉄郎)そうだ,思い出したぞ.これはお母さんが機械伯爵に殺される前の日の晩だ.一旦この雪が止んで,昼間少し溶けて次の夜また降り出したとき,お母さんは殺されたんだ.(泣きながら)
(鉄郎)夢かな,
頬をつねる鉄郎
(鉄郎)いてて,夢じゃない.
(レリューズ)鉄郎さん
(鉄郎)レリューズ.うわあ,放せ,お母さんに知らせなきゃ.
(レリューズ)無駄よ.知らせることもどうすることもできないわ.過ぎ去った過去に人間は手を振れることは出来ない.見ることは出来てもね.
(鉄郎)でも.
(レリューズ)過去に手が触れられるのなら,いろんな人が自分の都合にいいように歴史を塗り替えてしまうわ.

ザクザク(雪の中を歩く鉄郎)
(レリューズ)そう,そうやって家の中を覗くのがせいぜいなの.
パチ,パチ(暖炉の火の音)
(レリューズ)過去のと未来の命は決して触れ合えないのよ.
(過去の鉄郎)お母さん,風が強いね.
(鉄郎の母)お父さんが生きていたら,ドアのゆるみなんて簡単に直してくれたのにねぇ.鉄郎.
(鉄郎)そうだよなぁ.
(鉄郎の母)おやすみ.また明日ね.
(鉄郎)その時.
(過去の鉄郎)うん,おやすみ.
(鉄郎)嵐の音の他には何も聞こえなかった.僕の声が聞こえたら,なんで,お母さんを死なせるもんか.(泣きながら)聞こえさえしたら...
(レリューズ)鉄郎さん,過去を振り返るのは時に恐ろしいほど過酷なもの.
(鉄郎)お母さんと寝た最後の夜だよ.これは.このときお母さんはまだ生きてた.お母さん,僕だよ.鉄郎だよ.う〜.(泣きわめく)
(レリューズ)私は行くわ.

時間城にて
(自称ハーロック)よせ,よしてくれメーテル.本気じゃないんだろ,やめてくれ〜.
(メーテル)私はあなたは勿論,この時間城を破壊する術を知ってるわ.もう,あなたは助からない.
(自称ハーロック)レリューズ,何処へ行ってた.
(レリューズ)ちょっと
(自称ハーロック)なんでも.早く時間を進めろ.コントロール室へ行け.500年ほど進めるんだ.そうすればこのメーテルはいっぺんに骨になる.われわれは機械の体だ.何ともない.どうした,レリューズ.早くやれ,やってくれレリューズ.
(メーテル)あなたには私の黒い服の意味も理解できない.死んでいったたくさんの若者の気持ちなんてもっと理解できない.
(自称ハーロック)レリューズ,やれ.
(レリューズ)ハーロックの名を名乗ったのが間違いよ.
(自称ハーロック)なんだと.裏切るのか.あの男はいやしないんだ.伝説の作られた海賊だ.俺が名乗って人々に夢を与えて何が悪い.
(レリューズ)若者の夢はね,あなたになんかに与えられる夢じゃないわ.あなたの夢は不潔な妄想だわ.卑怯者の独りよがりよ.
ビューン(スイッチを入れた音)
(自称ハーロック)レリューズ,お前はレバーを何処に動かしたんだ.
(レリューズ)鉄郎さんに会って,良〜くわかった.あなたの望むままに機械の体になった愚かしさが.
(自称ハーロック)なんだと.
(レリューズ)時間を操り永遠の命を手にしても,私たちに出来ないこともある.血の通った温かい人の心.歯をくいしばって闘う少年の心には手を触れることもできない.
(自称ハーロック)貴様,メーテルではなく,俺達と時間城の時間を進めたな.そうなんだな.
(レリューズ)さようなら,あなたは海賊という名の時間の亡霊だったわ.ただそれだけの男.
(自称ハーロック)うわあ〜〜〜〜〜〜
(メーテル)大丈夫?
(レリューズ)いいの.これは私が自ら決断したこと.私も時間城と共に滅びるわ.メーテル,鉄郎さんに伝えて,決して渡した異のような人生を歩んではいけないと.決して夢を捨てないでと.さようなら.

崩れさる時間城
ヒュー〜(砂嵐の音)
泣くメーテル

(機械の声)メーテル,メーテル,メ゛ーテ゛ル゛,メ゛ーテ゛ル゛....
(メーテル)はあっ,あの声は!
(鉄郎)メーテル.
(メーテル)鉄郎.
駆け寄る二人
(メーテル)よかった,時間の谷間に落ちたとばかり...
(鉄郎)レリューズさんが探しに来てくれたんだ.メーテル,この砂嵐は?時間城は?凄い爆発があったけど.
(メーテル)消えたわ.何もかも.
(鉄郎)そうか...ん?,メーテル,泣いていたのかい?
(メーテル)えぇ,悲しくてね.
(鉄郎)こんな小さな機械が落ちてた.メーテルの名を呼び続けて...
(メーテル)それは機械に魂を売った哀れな人の心.
(鉄郎)よく,知っている人かい?
(メーテル)えぇ,とてもよく知ってた人の心よ.鉄郎みたいだった人の.あの人は夢や希望を持った若者を殺したり苦しめたりするのが生き甲斐だった.でも,私の死っていた頃のあの人は,昔のあの人は夢も希望もあふれるほど持った若者だった.
(鉄郎)そうだったのか.
ゴォォォォォ〜
(鉄郎)はぁっ,あの戦艦は?
(メーテル)アルカディア号,本物のハーロックの船よ.^_^
(鉄郎)え〜,ほんもの,じゃあ,もしかしてあのマント姿の戦士の銃を持った人が?
(メーテル)そうよ.
(鉄郎)そうか,キャプテン・ハーロックは男の中の男だ.時間城へ行く僕を止めたりしなかったもんなぁ.
(メーテル)ハーロックは決して友達を裏切らない人よ.いつかまた巡り会うときがあるわ.鉄郎.

999の列車の音
999の汽笛

(ナレーション )
メーテルの黒い服は死に別れてきた多くの若者たちへの
永遠の喪に服しているからだと鉄郎は思った.
そしてメーテルも友達を決して裏切らない.
やさしい人だと.鉄郎は信じている.

(ナビゲーター)
時間城にちなんでこんな話を一つ,
冬の星座で最も形が整っているというオリオン座.
オリオン座は古く紀元前1300年ごろにはすでに知られていました.
あのエジプトのピラミッドにはオリオン座の星の配置を
参考にしたといわれるものがあるんですね.


(ファウストの感想:探し出せない鉄郎を探し出したレリューズって凄い人だね.あの機械の声は一体誰なのか?)

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